心を癒すだけじゃない? 音楽と記憶のふしぎな関係

ふと街を歩いている時に耳にした音楽で、一気に記憶がよみがえった経験はありませんか。ある時期に何度も聴き続けた音楽は、その時の感情と強く結びついているもの。あなたも記憶と音楽との不思議な関係について、考えてみましょう。

記憶と音楽の関係

TV番組の"懐メロ特集"で十年前に流行していた曲を聴くと、自然と当時の記憶が思い出される、ということがありませんか。あるいは、たまたま街を歩いていたときに、昔お気に入りだった曲が店頭から聞こえてきて、突然に何かを思い出した、ということもあるかもしれません。このように、音楽を聴いて過去を思い出すということを、誰もが経験しているのではないでしょうか。中には、当時お付き合いしていた恋人と遊園地で過ごした1日の気候や匂いまでを含めて、具体的に思い出してしまう方もいるでしょう。

聴覚からの刺激は、偏桃体・海馬を刺激しつつ、大脳辺縁系へ伝わります。これは、聴覚の記憶を保持するとき、同時に感情などの情報も伴うということ。そのため、音楽を聴くとある記憶が想起されるというわけです。音楽を聴いてある記憶を思い出すことは、脳科学ではこのように説明されています。

アンソニー・バージェスの小説で、スタンリー・キューブリックにより映画化された『時計じかけのオレンジ』では、記憶と音楽にまつわる興味深い描写がみられます。この物語では、主人公のアレックスが数々の悪事をはたらいた罰として、"ルドヴィコ療法"と称する刑を受けることになります。この治療の内容は、暴力的な映画を観ながら吐き気を催す薬を飲まされ、彼の敬愛していたベートーヴェンの第9を聞かされるという荒治療でした。この治療を施されたアレックスは、それ以来大好きだった第9を聴くたびに吐き気を催してしまうという症状に悩まされることになります。これは音楽と記憶の結びつきを利用した罰だといえるでしょう。

"音楽療法"は認知症の治療法のひとつ

音楽と記憶との関係を利用して、認知症の患者に音楽を聴かせる"音楽療法"という治療法に注目が集まっています。音楽療法士が患者の枕元でその人にとっての馴染の曲を演奏すると、その人の記憶がよみがえることがあるのだとか。これまでに音楽療法をしたことのない方は、音楽療法の専門家である音楽療法士の力を借りてみてもいいかもしれません。もちろん、身内の人に演奏のスキルを持っている人がいるのであれば、自分たちで音楽を奏でても構いません。懐かしい音楽を聴いて何らかの効果がみられるかもしれませんし、みんなで音楽を楽しむことによる心のケアの効果も期待できます。認知症は、本人だけでなく周りの家族にとってもつらい状況を起こしやすい病気です。時には人間関係がピリピリしてしまうこともあるでしょうから、音楽療法で記憶をよみがえらせるとともに楽しい雰囲気をつくれるといいですね。

音楽を聴くことには、その時の感情などの記憶を思い出させる効果があります。このような音楽と記憶の関係を利用した認知症治療法のひとつとして"音楽療法"があります。忘れたくない大切な日には、その日の気分に合った音楽を聴けば、いい思い出をつくることができるかもしれませんね。

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